相手に批判的な情報を伝えるときは感情をマネジメントしろ!

怒るというのは感情をぶつけることで、叱るというのは情報を伝えること。
そんな風に思ってた時期が私にもありました。でもそれはちょっと違ってたようだ。

理想的な叱り方というのは、

  • 自分と相手の感情をマネジメントしながら情報を伝えること

だったんだ。自分的にはこれすげー発見。

君は、感情と思考を切り離して扱えるか?

エガミくんの脆弱性のやつ」という書き込みで始まる一連の増田エントリの中で*1はまちちゃんによって下記のような指摘がなされる。

なんでみんな、たった一言「htmlspecialchars()でくくれよ!」って
直接、正解を言ってくれなかったんだろう。一言で済むのにね。

それは、みんな色々な意見があるんだろうけど…
たぶん、
みんなが何かにイラついていて余計に煽るような状態になっちゃっていたり
きみも何かにイラついてしまって、うまく聞けない状態になっていたりしたとか、
なんかそういうことなんじゃないかな。
よくわからないけど。

おお。確かに自分を含めた世の中の多くの人は、

  1. 感情と思考を別々のものとして扱えない
  2. 感情の方が思考よりも優先される傾向にある

と思う。

そういう人は、何かを否定や拒否する感情(負の感情)が昂ぶると、感情が情報の入力や出力(思考)をブロックしてしまう。いわば一人情報鎖国状態になる。こうなるともう、どんなに論理的に正しい話でも通じなくなる。

だから感情のマネジメントが重要になる。

誰かを批判するときには

否定的な感情を極力発生させないように留意する。

可能な範囲で、前向きな言葉、暖かい言葉、肯定的な表現を用いたコミュニケーションを狙う。単に気分を明るく保つというだけではなく、自分の感情と相手の感情がシンクロするのが(批判的な)情報伝達のためには理想である(互いの目的が明示的に共有されていると、この状態は作り易い)。

なんだか小難しくてよくわがんね!という人は、とりあえず批判する相手のことを一時的にでも好きになっとけば大丈夫。好きな人に伝える言葉は、嫌いな人に言う言葉とは全然違った、暖かな感情の込められたものになるからな。

また逆に、議論に勝ちたいだけのときは、相手が負の感情を昂ぶらせるように持って行く。それと並行して「客観的に見て論理的に正しい批判」をぶつければOK。感情的になった相手は論理的に破綻するのも時間の問題なので、攻撃をしかけやすくなる。

相手がよく訓練された人間だった場合、感情と思考が切り離されてるから、そんな陳腐な感情揺さぶり攻撃ではびくともしないけど。

誰かから批判を受けるときには

批判の言葉の中に含まれた「情報」と「感情を煽る言葉」とを区別する。

感情を煽る言葉は華麗にスルーしてしまっても構わないのだが、自分の感情のコントロールに自信がついてきたら、今度はその「感情を煽る言葉」をヒントにして、

  • 語り手が一番強調したい「情報」は何か?を読み取る
  • 語られた「情報」以外に匂わせている情報はないか?を考える
  • 語り手の目的を推察する。なぜそれを自分に伝えたのか?を考える

上記をやってみよう。

日常的にこれが出来ている人には面白くもなんともないだろうが、できなかった人ができるようになると、今までよりも人とのやり取りが、ちょっぴり重厚で面白いものに感じられるようになると思う。憧れの大人のコミュニケーションである。

時間があるなら「汝は人狼なりや?」というゲームを体験してみるのもお勧めだ。

批判を受ける姿勢について

幼すぎても、歳を取り過ぎても批判を真っ直ぐ受け止められなくなる気がする。どんな内容の批判を受けても、なんだか「人格を否定された!」ように感じてしまって素直に聞けなくなるのだ。そうならないために、

  • 普段から自分の感情と思考を別物として意識する
  • どんな批判にも情報が含まれていることを理解する
  • 多くの人間は、自分にとってどうでもいい人を批判したりしない、ということを肝に銘じておく

批判してくれる人は貴重な存在、人生の宝です。大切にしよう。

…というような意識があれば、おそらく何歳になっても自省的で批判を客観的に受け止められる人間になれる…かもしれない。

まとめ

これで誰からも批判されない「裸の大先生」にはならないぞ!

あと子供を叱るときにも気をつけるぞ!子供いないけどな!*2

エモーショナルマネジメントはこれから広がる分野だと思うぞ!*3

余談1:「どーにも話が通じねえなー」と思う対象がいる場合

感情のマネジメントよりも、コンテキストの共有が不足している可能性が高いです。手前味噌ですが、こちらを参考にしてください。

余談2:どうすれば感情と思考を別々に扱えるようになるか

本を早くたくさん読むのが意外と効果的かもしれない。

「流暢に読解する読み手の脳は今まさに、進化した文字を読む脳の最も重要な才能を手に入れようとしている。時間である。解読プロセスをほぼ自動化させてしまった若い流暢な脳は、隠喩、推論、類推、情動というバックグラウンドを経験から得た知識と統合させて、そのたびに時間を1ミリ秒ずつ縮めることを学ぶ。読字発達の過程で初めて、脳が思考と感情を別々に処理できるだけの速さを手に入れるのだ。」

情報の処理能力(思考力)というのは、言語の処理能力のこと…だとすれば、言語処理能力を極限まで高めてやることで、ようやく感情が励起される速さに、思考の回転する速さが追いつくようになるのかもしれませんね。

*1:もう全体的にはまちちゃんの根気と優しさがすごいのだけど

*2:嫁もいないけどな

*3:既にあったらごめん