ノーアウト、ランナー1塁におけるバントは意味あるの?

高校野球最大の勘違いというエントリで、id:teruyastar が「バント意味なくね?」という話をしている。楽しそうなので反論を試みる。

一つの参考となるデータがこちら。これは日本のプロ野球において、ノーアウト、ランナー1塁の状況でバントをしなかった場合と、した場合の得点を平均したものらしい。

バントしない → 得点確率 40.6% 平均得点 0.885点
バントする → 得点確率 40.4% 平均得点 0.758点

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1023796835

なるほど。バントをした方が得点が低くなってるね。でも…。

統計の罠

統計によって純粋に「バントって効果無いよね」と言うためには、

  • バントをするかしないかをランダムに決める監督であること
  • 1つのチームにおいて連続的なデータを取ること

という2つの前提条件が必要になる。

なぜなら、ノーアウト、ランナー1塁でバントをするかしないかは、チームの監督が各種の状況を判断して「バントする!」または「バントしない!」という恣意的な決断を行っているからだ。つまり、

  • バント以外の要素がバントの結果(得点)に影響を与えている

のは明らかだからね。

じゃあランダムにバントすると仮定したらどうなるのよ?

全ての選手が固定確率でヒットを打つと仮定した数学モデルを作り、その中でバントの有効性を検証した結果が、下記のURLにある。
http://www.geocities.jp/shinonomenod/buntorhit.html
ここから仮定と結論だけ抜き書きすると、

仮定

  • 打者は全員打率三割でシングルヒットしか打たない。
  • ヒットでは走者も一つしか進塁しない。
  • アウトの場合、走者は塁に釘付け。(ダブルプレイもアウトの間の進塁もなし)
  • 送りバントは100%成功。
  • エラーや四死球、ボーク等はなし。

で、上記仮定の中の打率を変えて検証してみた結果が、

結論
打者の平均打率が二割九分以上の場合はヒッティング、
二割八分以下の場合は送りバントをした方が良い。

ということになっている。詳しい数字はリンク先参照のこと。

この結論は体感ともよく一致するように思う。ノーアウト、ランナー1塁の状況になったときをボンヤリ想像して、

  • 3割打者なら、ヒッティングさせた方がいいかなー
  • 2割打者が2名以上続くなら、バントさせた方が得策かもなー

という具合だ。

また本来なら(上記の仮定とは違い)バントの成功率は8割ぐらいだと思うので、実際の「バントをした方が良いかどうかの損益分岐点」はもう少し下がるように思う。2割5分〜2割3分ぐらいかな?勘だけど。

バントによって得られる他の“攻撃”

また、試合の場所を『高校野球』に限定すると、プロ野球とはまったく違う統計データが得られるだろうと予想する。その根拠は、

  • 負ければ終わりなので1球にかかるプレッシャーが強い
  • 選手が全員18歳以下(プロ野球選手よりも技術的、精神的に未成熟)

上記の条件が揃うと、おそらく「ランナー2塁」というのはかなり有効な攻撃に成り得るはず。それは情報戦的にも、心理戦的にも「ランナー1塁」とは比較にならないほど有効な攻撃になるだろう。

どんな攻撃になるか?一部だけ紹介すると、

  • バッテリーは考えることが増える→疲れる、集中力を削がれる
  • 内野手はベースカバーや送球先の選択を迫られる→ミスを誘える
  • ライト方向の深いフライならタッチアップも可能になる(かも)
  • ダブルプレーを取れない→取れれば守備側は楽になり勢いに乗れる
  • バッテリーのサインや挙動を見られる→最悪サインを盗まれる

などなど。

これはバントをした回の得点に限った話だけではなく、一試合を通して有効に作用してくると予想される。特に高校野球では、相手に心理的なプレッシャーを与えることは、プロ野球より圧倒的に重要で有効だろうからな。1チームにおける投手の絶対数も少ないし、粒も揃ってないしね。

まとめ

統計データの裏付けが無い私見に過ぎないが、

『ノーアウト、ランナー1塁におけるバントは、プロ野球でもチーム打率が低いなら微妙に有効。高校野球においては状況に関わらずかなり有効』

だと思われる。

いつか統計的に証明してみたいですね。